暴力団情勢と対策

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行政機関(自治体対象)アンケート

はじめに

 本資料は、今後の行政対象暴力対策のあり方を検討するために、平成19年5月から6月にかけて、全国の自治体を対象に、暴力団等の反社会的勢力による行政機関に対する不当な要求等の実態、これに対する行政機関の対応、行政機関からの警察、弁護士会、全国暴力追放運動推進センターに対する要望等をアンケート調査した結果を概要としてとりまとめたものです。
 ご多用の中、調査に快く協力いただきました各自治体の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。

調査の概要

1 調査の方法、対象等
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。

    1. 調査方法 ・・・ 郵送法
    2. 調査対象 ・・・ 全国の都道府県、市及び特別区の合計852自治体に対して、各5通(総務担当、公共事業担当、環境担当、福祉担当及び不動産関係担当の各部門用)の調査票を送付した。

 
2 回収結果
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。
 調査票回収数は3,018通(回収率70.8%)であった。

調査結果の概要

特問1 長崎市長襲撃事件の所感(複数回答)
 長崎市長銃撃事件を踏まえ、行政対象暴力に対応していくうえで感じたことについては、「警察と日頃から連携しておくことが大事」(86.5%)をあげたものが最も多く、以下「幹部であれ職員であれ組織的に対応しなければならない」(86.1%)、「社会から暴力団を断固として排除しなければならない」(79.1%)と続く。一方で「対応していくのに不安」、「仕事で暴力団とは絶対に関わりたくない」としたものがそれぞれ41.0%と31.3%あった。
 
特問2 不安解消に向けた要望(複数回答)
 長崎市長銃撃事件を踏まえ、行政対象暴力に対応していくことの不安を解消するために望むこととしては、「行政対象暴力に対する取締りの強化」(87.1%)をあげたものが圧倒的に多く、以下「担当する警察官との平素からの連携」(73.7%)、「行政対象暴力に対する罰則の強化」(60.2%)、「警察によるきめ細かな相談対応」(59.9%)、「危害を受ける心配がある場合の警察による保護」(58.5%)などとなっており、警察の取締りや警察との連携に高い期待が寄せられている。
 

1 不当要求等の有無について

 過去に、暴力団等反社会的勢力から許認可、工事等の契約、指導監督、公金支給等の権限行使や機関紙(誌)の購読、物品の購入等に関して違法な行為や不当な要求(以下、不当要求等という)を受けた経験の有無については、「ある」とするものが1,010件で33.5%を占めた。 また、不当要求等を受けた経験について部門ごとにみると、受けたことが「ある」としたものの割合が最も多かったのは公共事業担当部門で41.9%であった。以下、「ある」とする割合の多い順に、総務担当部門の34.4%、環境担当部門の34.0%、福祉担当部門の30.4%、不動産担当部門の24.3%となっている。 
【総務担当部門】
 
【公共事業担当部門】
 
【環境担当部門】
 
【福祉担当部門】
 
【不動産担当部門】
 

2 最近1年間における不当要求等の有無について

 過去に不当要求を受けたことがあるするもの1,010件のうち、「最近1年間に不当要求等を受けた」とするものは529件で52.4%であった。「平成14年度行政対象暴力に関するアンケート」における同様の質問に対する回答結果では、「最近1年間に不当要求を受けた」としるものが73.8%であり、今回は21.4ポイント少なくなっている。 部門ごとにみると、「最近1年間に不当要求等があった」とした割合の多い順に、福祉担当部門54.6%、総務担当部門53.8%、不動産担当部門53.0%、公共事業担当部門50.4%、環境担当部門50.2%となっている。
 
【総務担当部門】
 
【公共事業担当部門】
 
【環境担当部門】
 
【福祉担当部門】
 
【不動産担当部門】
 

3 不当要求等を行ってきた者について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする529件について、不当要求等を行ってきた者をみると、「政治活動標ぼうゴロ」(38.6%)をあげたものが最も多く、「社会運動標ぼうゴロ」(32.3%)、「その他」(31.2%)と続き、「暴力団」(11.5%)や「暴力団関係企業」(7.2%)を大きく上回っている。

4 不当要求等の内容について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする529件について不当要求等の内容をみると、「機関紙(誌)の購読」(24.4%)をあげたものが最も多く、「物品購入」(19.5%)とともに比較的多かった。次いで、行政特有のものとしての「生活保護等の公的給付の支給」(14.4%)、「公共工事の入札、指名、受注、下請に関する便宜等」(10.4%)、「許認可等の決定」(10.0%)、「公共工事の受注業者に対する行政指導等」(8.5%)と続いている。

5 不当要求等の態様について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする529件について、不当要求等の態様をみると「電話を架けてきた」(79.6%)をあげたものが最も多く、次いで「来庁してきた」(57.1%)も6割近くがあげており、「文書を送付してきた」(11.3%)、「機関紙(誌)を一方的に送付してきた」(6.6%)などを大きく上回っており、大部分が来庁したり電話をかけてくるなど、直接働きかけてきていることがうかがわれる。

6 対処の仕方について

 最近1年間に不当要求等があったとする529件について、不当要求等に対する対処の仕方をみると、「全ての不当要求を拒否した」(87.1%)とするものが大部分で9割近くにのぼった。しかし、一方で「全ての不当要求等に応じた」とするものが5件(0.9%)あり、これに「不当要求等の一部に応じた」(10件・1.9%)、「当初拒否したが最終的には不当要求等に全面的に応じた」(3件・0.6%)及び「当初拒否したが最終的に不当要求等の一部に応じた」(41件・7.8%)を合わせると、一部でも要求に応じたものは59件(11.2%)になる。

7 不当要求等に応じた理由について(複数回答)

 少なくとも一部でも不当要求等に応じたとする59件について、不当要求等に応じた理由をみると「トラブルが拡大することを恐れた」(40.7%)をあげたものが最も多く、要求に応じたとする59件のうち4割を超えた。次いで、「威圧感を感じたから」(32.2%)、「対応に不慣れであったから」(27.1%)、「以前から応じており、断るのが困難だから」(22.0%)が続く。「平成14年度行政対象暴力に関するアンケート」における同様の質問に対する回答結果と比較すると、「トラブルが拡大することを恐れた」、「幹部が直接対応してしまった」、「当方にも一部非があった」をあげたものの割合が多くなっている。

【参考】平成14年度行政対象暴力に関するアンケート

 

8 不当要求等に従わなかったときの相手方の行動について

 前記6「対処の仕方」において、少なくとも不当要求等の一部を拒否したと考えられるもの515件(「不当要求等の一部に応じた」、「当初拒否したが最終的には不当要求等に全面的に応じた」、「当初拒否したが、最終的には不当要求等の一部に応じた」、「全ての不当要求等を拒否した」)について、不当要求等に従わなかった時の相手方の行動をみると、「引き下がった」(68.2%)とするものが7割近くにのぼった。「引き下がらなかった」とするのものは151件・29.3%あった。 「平成14年度行政対象暴力に関するアンケート」における同様の質問(ただし、複数回答)に対する回答結果では、「引き下がった」をあげたものが46.6%であり、今回は「引き下がった」とする割合が高くなっている。

9 不当要求等に従わなかったときの相手方の行動について(複数回答)

 少なくとも不当要求等の一部を拒否した際に相手が「引き下がらなかった」とする151件について、相手方の行動をみると、「庁舎に現れたり、迷惑電話をかけたりの嫌がらせ行為を続けた」(45.0%)をあげたものが最も多く、「不当要求等の内容または態様を変えてきた」(32.5%)、「関係官庁やマスコミ等に連絡する」 (19.9%)などが続く。また、「物的な損害や人的な危害を加えてきた」(7.9%)や「自宅まで押し掛けてきた」(2.0%)とするものもあった。

10 不当要求等への対応について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする529件について、不当要求等に対する対応の仕方をみると「担当者が所属する組織で対応した」(54.1%)をあげたものが最も多く、「所属する行政機関全体で対応した」をあげたものも20.8%あったが、「担当者個人で対応した」をあげたものも33.5%あった。

11 対処に際して部外者への相談の有無

 対処に際して部外者への相談の有無を見ると、「相談した」とするものが229件・43.3%、「相談していない」とするものは55.2%であった。

12 対処に際しての相談先(複数回答)

 前記11で部外者に相談したとする229件について、その相談先をみると、「警察」(80.3%)をあげたものが最も多く8割を超えた。次いで「弁護士」(31.0%)、「上部機関」(13.1%)となっている。「暴力追放運動推進センター」をあげたのは7.0%であったが、「平成14年度行政対象暴力に関するアンケート」における同様の質問では「暴力追放運動推進センター」をあげたものは3.2%であり、今回はその割合が倍増している。

13 不当要求等対策の取組みの有無

 現在の不当要求等対策の取組みの有無については、取組みを「行っている」とするものが2,171件・71.9%と7割を超え、「行っていない」が818件・27.1%であった。「平成14年度行政対象暴力に関するアンケート」における同様の質問(ただし、複数回答)では、「取り組んでいない」をあげたものが51.2%と半数を超えており、これと比較すると取り組んでいないとする割合は大きく減少している。

14 不当要求等への取組み内容(複数回答)

  前記13で、不当要求等対策の取組みを行っているとする2,171件についてその取組み内容をみると、「不当要求対応のための要綱等の策定」(63.2%)をあげたものが最も多く、次いで「不当要求対策のための委員会等の設置」(51.2%)、「不当要求対応マニュアル等の対応要領の作成」(49.0%)、「警察・暴力追放運動推進センターの講習・研修の受講」(43.3%)、「職員に対する研修」(42.8%)、「不当要求防止責任者の選任」(41.3%)などとなっており、組織内の方針や体制の整備、職員の対応能力の向上に向けた取組みが行われていることがうかがわれる。

15 不当要求等対策の取組みを行っていない理由

 前記13で、不当要求等対策の取組みを行っていないとする818件についてその理由を見ると、「必要性は感じたが、手が回らなかった」(36.9%)とするものが最も多かった。一方で、「取組みの必要性を感じなかった」(36.6%)とするものがほぼ同数あった。「現在、取組みについて検討中である」とするものは14.5%であった。

16 暴力追放運動推進センターに力を入れて欲しい活動(複数回答)

 暴力追放運動推進センターの活動で力を入れて欲しいものとしては、「反社会的勢力の実態や不当要求等の予防に関する知識の普及」(86.4%)をあげたものが8割を超えて最も多く、「暴力団等反社会的勢力による不当な行為に関する相談」(70.0%)、「反社会的勢力の実態や不当要求等の予防に関する知識の普及に関する講習会の開催」(66.3%)が続き、反社会的勢力対策に関する知識の普及活動に対する要望が強いことがうかがわれる。次いで、「市町村や業界等で行う暴力団排除活動や事務所撤去活動への協力・支援活動」(55.3%)となっている。

 

17 不当要求等対策についての警察への要望(複数回答)

 不当要求等対策を推進するに当たり、警察に対して望むこととしては、「暴力団等反社会的勢力による犯罪の徹底的な取締り」(90.3%)をあげたものが9割と圧倒的に多く、「脅迫を受けた際の保護」(69.6%)がこれに続くなど警察の執行力に対する要望が強いことがうかがわれる。以下、「暴力団等反社会的勢力に関する情報」の提供(68.2%)、「暴力団関係企業に関する情報の提供」(61.3%)などの情報提供を求めるものが続く。

18 不当要求等対策についての弁護士、弁護士会への要望(複数回答)

 不当要求対策を推進するに当たり、弁護士、弁護士会に対して望むこととしては、「実際に発生した不当要求の事例やそれに自治体や警察等の関係機関がどのように対処して解決したかといった実例情報の提供」(82.5)をあげたものが8割を超えて最も多かった。次いで「職員に対し、日頃から法的な助言を行う、若しくは相談を受理する体制を整えること」(69.1%)、「行政機関を対象とした不当要求対策マニュアルの配布」(59.3)などが続く。

19 暴力団員等にかかる生活保護の取扱いの有無

 平成18年3月30日付の、厚生労働省社会・援護局保護課長名通知「暴力団員に対する生活保護の適用について」により、暴力団員には生活保護を適用しない方針とされた。福祉担当部門について、同通知の発出以後における暴力団または暴力団員と思われる者による生活保護の申請却下や廃止の取扱いの有無をみると、「ある」としたものが101件・16.8%あった。

20 暴力団員に生活保護を適用しない方針とされたことによる利点(複数回答)

 上記19で、厚生労働省の通知の発出以後における暴力団員等による生活保護の申請却下や廃止の取扱いがあるとした101件につき、暴力団員に生活保護を適用しない方針とされたことによる利点をみると、「警察への照会が可能になった」(77.2%)をあげたものが最も多く、「警察との連携強化や情報交換が円滑に行われるようになった」(72.3%)が続き、警察との連携が強化されたことを評価するものが高い割合を占めた。以下、「暴力団員には生活保護を適用しないという意識が担当職員に浸透した」(64.4%)、「組織的に対応できるようになった」(59.4%)、「対応マニュアルに沿って対応できるようになった」(34.7%)など、暴力団の生活保護の事務に関する職員の意識や対応能力の向上につながったとするものが続いた。「よかった点はない」とするものはなかった。

21 暴力団員による生活保護の申請却下または廃止を取り扱う上での問題点の有無

 厚生労働省の通知発出以後、暴力団員による生活保護の申請却下または廃止の取扱いに関する問題点の有無については、「ある」とするものが71件・70.3%、「ない」が23.8%、「分からない」とするものが5.9%であった。

22 暴力団員による生活保護の申請却下または廃止を取り扱う上での問題点(複数回答)

 上記21で、問題点があるとした71件につき問題点の内容をみると、「暴力団員との申し出がない限り、外見や言動のみでは判断することは難しい」(83.1)が圧倒的に多く8割を超え、「精神的な負担を感じる」(76.1%)、「認めなかったら報復、糾弾等を受ける危険性がある」(38.0%)が続き、担当職員の多くがこの事務を難しいと感じていることがうかがわれる。

23 生活保護から暴力団員を排除するための対応策等について(複数回答)

 今後、生活保護から暴力団員を確実に排除していくために必要なものとしては、「地元警察署とのホットラインの構築」(75.2%)をあげたものが最も多く、「必要な場合の警察官の臨場(立ち会い)」(74.3%)がほぼ同じ割合で続き、警察との連携を求めるものが高い割合を占めた。以下、「生活保護担当職員に対する定期的な研修会等の開催による対応能力の向上」(56.4%)、「統一的な対応マニュアルの配布」(46.5%)、「警察OB等の採用による面接時の同席」(45.5%)など対応能力の向上を求めるものが続く。