暴力団情勢と対策

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行政機関(地方支分部局等対象)アンケート

はじめに

 本資料は、今後の行政対象暴力対策のあり方を検討するために、平成17年8月に、国の行政機関の地方支分部局等を対象に、暴力団等の反社会的勢力による不当な要求等の実態、これに対する行政機関等の対応、行政機関等からの警察、弁護士会、暴力追放運動推進センターに対する要望等をアンケート調査した結果を概要としてとりまとめたものです。 ご多用の中、調査に快くご協力いただきました各行政機関等の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。

調査の概要

1 調査の方法、対象等
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。

    1. 調査方法 ・・・ 郵送法
    2. 調査対象 ・・・ 国の行政機関の地方支分部局等4,285機関に対して調査票を送付して調査を行った。 

 
2 回収結果
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。
 調査票の回収数は、3,790通(回収率88.4%)であった。

調査結果の概要

1 不当要求等の有無について

 過去に暴力団、暴力団関係企業、政治活動標ぼうゴロ、社会運動標ぼうゴロ等の反社会的勢力から許認可、指導監督、公金支給等の権限行使や機関紙(誌)の購読、物品の購入等に関して違法な行為や不当な要求(以下「不当要求等」という)を受けた経験の有無については、「ある」とするものが831件で21.9%を占めた。

 

2 最近1年間における不当要求等の有無について

 過去に不当要求等を受けた経験があるとする831件のうち、「最近1年間に不当要求等があった」とするものは594件で71.5%にのぼった。

3 不当要求等の頻度について

 最近1年間に不当要求等があったとする594件のうち、不当要求等の頻度についてみると、「年に数回程度」とするものが大部分で、89.6%(532件)を占めた。次いで「1ヶ月に1回位」(26件・4.4%)、「1週間に1回位」(20件・3.4%)と続くが、「ほぼ毎日」とするものも8件(1.3%)あった。

4 不当要求等を行ってきた者について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について、不当要求等を行ってきた者をみると、「えせ同和行為者」をあげたものが45.6%(271件)と最も多く、次いで「えせ右翼」が39.4%(234件)となっており、「暴力団」(20件・3.4%)及び「暴力団関係企業」(10件・1.7%)を大きく上回っている。

5 不当要求等を行ってきた者で一番頻度の高かった者について

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について、不当要求等を行ってきた者の中で頻度が一番高かったのは「えせ同和行為者」の32.3%(192件)で、次が「えせ右翼」(177件・29.8%)となっており、両者を合わせると6割を超える。「暴力団」は9件(1.5%)、「暴力団関係企業」は6件(1.0%)にとどまっている。

6 不当要求等の内容について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について不当要求等の内容をみると、「物品購入」(199件・33.5%)をあげたものが最も多く、次いで「機関紙(誌)の購読」(181件・30.5%)、「寄付金・賛助金等の提供」(66件・11.1%)となっている。行政事務に関するものとしては、「公共工事の受注業者に対する行政指導等」(65件・10.9%)、「公共工事の入札等に関する情報提供」(54件・9.1%)、「公共工事等の入札、指名、受注、下請に関する便宜等」(48件・8.1%)などが比較的高い数字で続いている。

7 不当要求等の態様について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について、不当要求等の態様をみると、「電話を架けてきた」をあげたものが83.8%(498件)と最も多く、「来庁してきた」が38.0%(226件)で続き、「機関紙を一方的に送付してきた」(50件・8.4%)や「文書を送付してきた」(35件・5.9%)などを大きく上回っており、不当要求等の相手方が来庁したり電話を架けてくるなど、直接的に要求を行っていることがうかがわれる。

8 来庁時の態様について(複数回答)

 前記7「不当要求等の態様」で相手方が来庁してきたとする226件について、来庁時の相手方の態様をみると、「言動、態度で威圧してきた」をあげたものが53.1%(120件)と過半数にのぼった。次いで「居座り続けた」(63件・27.9%)、「執拗に来庁した」(37件・16.4%)が続くが、「机を叩く、灰皿を投げる、物を壊すなどの暴行を加えた」(13件・5.8%)や「胸ぐらをつかむなどの暴行を加えた」(4件・1.8%)など具体的な暴力行為を受けたとするものもあった。

9  対処の仕方について

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について、不当要求等に対する対処の仕方をみると、「全ての不当要求等を拒否した」とするものが大部分で、9割を超えた(538件・90.6%)。しかし、一方で「全ての不当要求等に応じた」とするものが14件(2.4%)あり、これに「半分以上の不当要求等に応じた」(8件・1.3%)及び「半分以上の不当要求等を拒否した」(29件・4.9%)を合わせると、少なくとも一部でも不当要求等に応じたとするものは51件(8.6%)あった。

10 不当要求等に応じた理由について(複数回答)

 前記9で少なくとも一部でも不当要求等に応じたとする51件について、不当要求等に応じた理由をみると、「以前から応じており、断るのが困難だから」(27件・52.9%)が最も多く半数以上があげている。次いで、「対応に不慣れであったから」及び「要求金額が少額だったから」(いずれも14件・27.5%)、「威圧感を感じたから」(13件・25.5%)、「トラブルが拡大することを恐れた」(12件・23.5%)となっている。また、「他機関でも応じているから」とするものが7件(13.7%)あった。

11 不当要求等に従わなかったときの相手方の行動について(複数回答)

 前記9「対処の仕方」において、少なくとも不当要求等の一部を拒否した575件(「半分以上の不当要求等に応じた」、「半分以上の不当要求等を拒否した」、「全ての不当要求等を拒否した」を合わせたもの)について不当要求等に従わなかった時の相手方の行動をみると、「引き下がった」とするものが7割近く(388件・67.5%)を占めた。一方で「関係官庁やマスコミ等に連絡すると脅してきた」(48件・8.3%)、「不当要求等の内容または態様を変えてきた」(47件・8.2%)ものがあるほか「物的な損害や人的な危害を加えてきた」(4件・0.7%)や「自宅まで押し掛けてきた」(2件・0.3%)とするものもあった。

12 不当要求等への対応について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする594件について、不当要求等に対する対応の仕方をみると、「担当者が所属する部署で対応した」をあげたものがほぼ4割(241件・40.6%)で、「所属する行政機関全体で対応した」ものは22.9%(136件)あった。一方で、「担当者個人で対応した」をあげたものも4割を超えた(247件・41.6%)。「部外者に相談した」をあげたのは106件(17.8%)であった。

13 対処に際しての相談先(複数回答)

 前記12「不当要求等への対応」で、部外者に相談したとする106件について、その相談先をみると、「警察」をあげたものが最も多く8割を超えた(91件・85.8%)。次いで、「上部機関」(48件・45.3%)、「弁護士」(17件・16.0%)となっている。

14 不当要求等対策への新たな取組みの有無

 過去2年間における不当要求等対策への新たな取組みについては、全回答のうち取組みが「ある」とするものが1,342件で35.4%、「ない」が2,441件で64.4%であった。

15 不当要求等対策への取組みの内容(複数回答)

 前記14で「ある」とするもの1,342件について、取組みの内容をみると、「不当要求防止責任者を選任した」をあげたものが最も多く過半数(680件・50.7%)を占めた。次いで、「警察・暴力追放運動推進センターの講習等を受講した」(654件・48.7%)、「警察・暴力追放運動推進センターとの連絡体制の強化」(370件・27.6%)、「不当要求対応マニュアル等の作成」(343件・25.6%)、「職員に対する研修」(315件・23.5%)となっている。

16 不当要求等対策の取組みを行っていない理由

 前記14で新たな取組みが「ない」とするもの2,441件について、その理由をみると「すでに取り組んでおり新たに取り組む必要がなかった」が1,149件(47.1%)で最も多かった。一方で「取組みの必要性を感じなかった」とするものが757件(31.0%)、「取組みの必要性は感じたが手が回らなかった」が302件(12.4%)あった。

 

17 不当要求等への今後の取組み

 不当要求等への今後の取組みについては、全回答のうち取り組む予定が「ある」とするものが1,475件(38.9%)、取り組む予定が「ない」としたのは2,252件(59.4%)であった。

17-1 過去2年間の取組みの有無と今後の取組み

 前記14で過去2年間における新たな取組みが「ある」としたもの1,342件の今後の取組みをみると、今後も取り組む予定が「ある」とするものが約6割(817件・60.9%)を占め、「ない」とするものは36.7%(492件)であった。一方、過去2年間における取組みが「ない」としたもの2,441件のうち、今後取り組む予定が「ある」としたのは26.9%(657件)、「ない」としたものは72.1%(1,759件)を占めた。また、過去2年間に取組みがなかった理由として「取組みの必要を感じなかった」とする757件をみると、今後も取組みの予定が「ない」とするものが663件(87.6%)を占め、「ある」とするものは88件(11.6%)に過ぎなかった。
 
▼過去2年間に新たな取組みが「ある」としたものの今後の取組みの有無

▼過去2年間に新たな取組みが「ない」としたものの今後の取組みの有無

 

▼取組みの必要を感じなかったとしたものの今後の取組みの有無

 

18 不当要求等への今後の取組み内容(複数回答)

 前記17「不当要求等への今後の取組み」で、今後対策に取り組む予定があるとしたもの1,475件について、予定している取組みの内容をみると、「警察・暴力追放運動推進センターの講習等を受講する」をあげたものが47.3%(697件)で最も多かった。次いで、「警察・暴力追放運動推進センターとの連絡体制を強化する」(631件・42.8%)、「職員に対する研修を始める」(426件・28.9%)「不当要求対応マニュアル等の作成」(281件・19.1%)となっている。

19 暴力追放運動推進センターへの要望(複数回答)

 暴力追放運動推進センターの活動で力を入れて欲しいものとしては、「反社会的勢力の実態や不当要求等の予防に関する知識の普及」をあげたものが、全回答の8割を超え(3,202件・84.5%)、そうした知識の普及に関する「講習会の開催」(2,367件・62.5%)がこれに続くなど、反社会的勢力対策に関する知識の普及活動に対する要望が強いことがうかがわれる。次いで、「暴力団員による不当な行為に関する相談」(1,934件・51.0%)、「市町村、業界等の暴力団排除活動、事務所撤去活動への協力・支援」(1,208件・31.9%)の順となっている。

20 不当要求等対策についての警察への要望(複数回答)

 警察に対して望むこととしては、全回答のうち、「暴力団等反社会的勢力の犯罪の徹底的な取締り」(3,149件・83.1%)をあげたものが最も多く、警察の執行力に対する要望が強いことがうかがわれる。次いで「暴力団関係企業に関する情報の提供」(2,473件・65.3%)、「脅迫を受けた際の保護」(2,410件・63.6%)、「暴力団に関する情報の提供」(2,043件・53.9%)、「反社会的勢力への対応要領の教示」(1,971件・52.0%)となっている。

21 不当要求等対策についての弁護士、弁護士会への要望(複数回答)

 弁護士、弁護士会に対して望むこととしては、「職員に対し、日頃から法的な助言を行う、若しくは相談を実施する体制を整えること」をあげたものが6割を超え(2,413件・63.7%)、最も多かった。次いで、「行政対象暴力事案に関する講演会の開催や研修への講師の派遣」(1,960件・51.7%)、「三者協定のもとで、具体的な行政対象暴力事案について、救済に向けた取組みを行う」(1,515件・40.0%)となっている。