暴力団情勢と対策

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行政機関(地方支分部局等対象)アンケート

はじめに

 本資料は、今後の行政対象暴力対策のあり方を検討することを目的として、平成21年6月に、国の行政機関の地方支分部局等を対象に、暴力団等の反社会的勢力による不当な要求等の実態、これに対する行政機関等の対応、行政機関等からの警察、弁護士会、暴力追放運動推進センターに対する要望等についてアンケート調査した結果を概要としてとりまとめたものです。
 ご多用の中、調査に快くご協力いただきました各行政機関等の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。

調査の概要

1 調査の方法、対象等
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。

    1. 調査方法 ・・・ 郵送法
    2. 調査対象 ・・・ 国の行政機関の地方支分部局等3,375機関に対して調査票を送付して調査を行った。

 
2 回収結果
 調査票の回収数は、2,958通(回収率87.6%)であった。

調査結果の概要

1 不当要求等の有無について

 過去に暴力団、暴力団関係企業、総会屋、政治活動標ぼうゴロ、社会運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等の反社会的勢力から許認可、工事等の契約、指導監督、公金支給等の権限行使や機関紙(誌)の購読、物品の購入等に関して違法な行為や不当な要求(以下「不当要求等」という)を受けた経験の有無については、「ある」とするものが1割を超えている(341件・11.5%)。

 

2 最近1年間における不当要求等の有無について

 過去に不当要求等を受けた経験があるとする341件のうち、「最近1年間に不当要求等があった」とするものは141件で41.3%となっている。

3 不当要求等を行ってきた者について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について、不当要求等を行ってきた者をみると、えせ右翼等の「政治活動標ぼうゴロ」と、えせ同和行為者等の「社会運動標ぼうゴロ」をあげたものが共に49件(34.8%)と多く、「暴力団関係企業」(7件・5.0%)及び「暴力団」(4件・2.8%)を大きく上回っている。他、「その他」とした回答では、「悪質クレーマー」や「会社・新聞ゴロ」などをあげている。

4 不当要求等の内容について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について不当要求等の内容をみると、「その他」を除くと「物品購入」をあげたものが最も多く29件(20.6%)となっている。次いで、「機関紙(誌)の購読」26件(18.4%)、「寄付金・賛助金等の提供」(14件・9.9%)、「1以外の行政処分の決定(許認可等の決定以外)」(13件・9.2%)などとなっている。行政事務に関するものとしては、「行政サービスの提供」11件(7.8%)、「公共工事等の入札、指名、受注、下請に関する便宜等」10件(7.1%)などとなっている。他、「その他」とした回答では、「時間外対応の強要」や「各種検査の合格強要」などをあげている。

5 不当要求等の態様について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について、不当要求等の態様をみると、「電話を架けてきた」をあげたものが84件(59.6%)と最も多く、次いで、「来庁してきた」が79件(56.0%)となっており、直接的に要求を行う態様が占める割合が高く、「文書を送付してきた」(14件・9.9%)や「機関紙を一方的に送付してきた」(10件・7.1%)などを大きく上回っている。

6 来庁時の態様について(複数回答)

 前記5「不当要求等の態様」で相手方が来庁してきたとする79件について、来庁時の相手方の態様をみると、「大声を出すなど言動や態度で威圧してきた」が49件(62.0%)と最も多く、次いで、「居座り続けた」24件(30.4%)、「執拗に来庁した」22件(27.8%)となっている。その他、「机を叩く、灰皿を投げる、物を壊すなどの暴行を加えた」(6件・7.6%)や「胸ぐらをつかむなどの暴行を加えた」(3件・3.8%)など、具体的な暴行を行ったとするものもあった。他、「その他」とした回答では、「口調は穏やかだが繰り返し不当要求」や「社会運動であることを強調して不当要求」などをあげている。

7 対処の仕方について

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について、不当要求等に対する対処の仕方をみると、ほとんどが「全ての不当要求等を拒否した」としており9割を超えている(130件・92.2%)。一方、「不当要求の一部に応じた」と「当初、拒否したが最終的には不当要求等の一部に応じた」が共に4件(2.8%)となっており、合わせて8件(5.6%)が不当要求に応じたとしている。

8 不当要求等に応じた理由について(複数回答)

 前記7で少なくとも一部でも不当要求等に応じたとする8件について、不当要求等に応じた理由をみると、「威圧感を感じたから」、「以前から応じており、断るのが困難だから」、「トラブルが拡大することを恐れた」が、それぞれ3件で37.5%となっている。その他、「報復を受ける危険性があると思ったから」2件(25.0%)などとなっている。

9 不当要求等を拒否した場合の相手方の行動について

 前記7「対処の仕方」において、当初、不当要求等を拒否した134件(「当初、拒否したが最終的には不当要求等の一部に応じた」、「すべての不当要求等を拒否した」を合わせたもの)について、不当要求等を拒否した時の相手方の行動をみると、「何度も不当要求がなされたが最終的に引き下がった」77件(57.5%)、「すぐに引き下がった」40件(29.9%)となっており、両者を合わせると9割近く(117件・87.4%)が引き下がったとしている。一方、「引き下がらなかった」とするものも1割を超えている(14件・10.4%)。

10 不当要求等を拒否した場合の相手方の具体的な行動について(複数回答)

 前記7「対処の仕方」において、当初、不当要求等を拒否した134件(「当初、拒否したが最終的には不当要求等の一部に応じた」、「すべての不当要求等を拒否した」を合わせたもの)について、不当要求等に従わなかった時の相手方の行動をみると、「その他」を除くと「特に何もされていない」が最も多く32件で23.9%となっている。次いで、「マスコミ等に連絡すると脅してきた」22件(16.4%)、「不当要求等の内容等を変えてきた」20件(14.9%)、「嫌がらせ行為を続けた」14件(10.4%)などとなっている他、直接的な暴力行為を受けたとされる「物的損害や人的危害を加えてきた」とするものも3件(2.2%)あった。他、「その他」とした回答では、「脅し文句を発するもあきらめて帰った」や「実際にマスコミ等へ連絡した」などをあげている。

11 不当要求等への対応について(複数回答)

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について、不当要求等に対する対応の仕方をみると、「担当者が所属する組織(部署)で対応した」72件(51.1%)、「所属する行政機関全体で対応した」31件(22.0%)となっており、組織的に対応したとする割合が高くなっているが、「担当者個人で対応した」とするものも35件(24.8%)あった。「不当要求対策のための専門組織で対応した」をあげたのは5件(3.5%)であった。

12 対処に際して部外者への相談の有無について

 最近1年間に不当要求等があったとする141件について、対処に際して部外者への相談の有無についてみると、「部外者には相談していない」とする割合が高く93件(66.0%)となっており、「部外者に相談した」は46件(32.6%)となっている。

13 対処に際しての相談先について(複数回答)

 前記12「対処に際して部外者への相談の有無」で、部外者に相談したとする46件について、その相談先をみると、「警察」をあげたものが最も多く7割近く(32件・69.6%)となっており、次いで、「上部機関」(24件・52.2%)、「弁護士」(5件・10.9%)となっている。

14 不当要求等対策への取組みの有無について

 過去4年間における不当要求等対策への取組みについては、全回答のうち、「取組んだ」とするものが2,230件(75.4%)、「取り組まなかった」が710件(24.0%)となった。

15 不当要求等対策への取組みの内容について(複数回答)

 前記14で「取り組んだ」とするもの2,230件について、取組みの内容をみると、「不当要求防止責任者の選任」をあげたものが最も多く6割以上(1,340件・60.1%)を占めた。次いで、「警察との連絡体制の強化」(1,237件・55.5%)、「職員に対する研修」(1,108件・49.7%)、「警察による講習、研修の受講」(804件・36.1%)、「不当要求対策のための委員会等の設置」(769件・34.5%)などとなっている。また、「公共工事や委託業務、リース等の契約書への暴排条項の導入」(148件・6.6%)や「機関紙(誌)、情報誌等の一斉拒否」(95件・4.3%)など、直接的な対策への取組みとするものもあった。

16 不当要求等対策の取組みを行っていない理由

 前記14で過去4年間における不当要求等対策への取組みについて「取り組まなかった」とするもの710件について、その理由をみると、「不当要求を受けたことがないため、取組みの必要性を感じなかった」が最も多く過半数近く(343件・48.3%)を占めた。一方で、「既に(平成17年8月以前)取り組んでいた」(106件・14.9%)、「現在でも十分対応できており、取組みの必要性を感じなかった」(86件・12.1%)となっており、取り組んでいるまたは対応ができているとするものは、両者を合わせると192件(27.0%)あった。

 
 また、既に(平成17年8月以前)取り組んでいたとする106件について、取組の内容をみると、「不当要求対応マニュアル等の作成」が最も多く過半数(53件・50.0%)を占める。次いで、「不当要求対応のための要綱等の策定」(42件・39.6%)、「不当要求防止責任者の選任」(41件・38.7%)、「職員に対する研修」(26件・24.5%)などとなっている。また、「機関紙(誌)、情報誌等の一斉拒否」(9件・8.5%)や「公共工事や委託業務、リース等の契約書への暴排条項の導入」(3件・2.8%)など、直接的な対策への取組みとするものもあった。(複数回答)

17 専門組織の設置について

 専門組織の設置については、全回答のうち「設置しておらず、今後も設置する予定はない」とするものが過半数を超えており(1,526件・51.6%)、次いで、「設置している」1,078件(36.4%)、「設置に向けて取り組んでいる」289件(9.8%)となっている。

18 契約書・契約規定等への暴力団排除条項の有無について

 契約書や契約に関する規程等への暴力団排除条項の有無については、全回答のうち、「盛り込んでおらず、今後も盛り込む予定はない」とするものが過半数を超えている(1,482件・50.1%)。以下、「盛り込んでいる」684件(23.1%)、「盛り込んでいないが、今後盛り込む予定である」381件(12.9%)となっている。

19 暴力団排除条項の導入状況(複数回答)

 前記18「契約書・契約規定等への暴力団排除条項の有無」において、暴力団排除条項を盛り込んでいるとする684件について、暴力団排除条項の導入状況をみると、「工事・製造の請負」への導入が最も多く半数以上(383件・56.0%)となっている。次いで、「公有財産の売却」267件(39.0%)、「コンサルタント業務の請負」165件(24.1%)、「役務の提供」105件(15.4%)などとなっている。また、「上記契約を含む、すべての契約」とするものが99件(14.5%)あった。

20 暴力団排除条項を盛り込む予定がない理由について(複数選択)

 前記18「契約書・契約規定等への暴力団排除条項の有無」において、暴力団排除条項を盛り込んでおらず、今後も盛り込む予定はないとする1,482件について、その理由をみると、「暴力団等による不当要求等の被害を実際に経験したことがない」が661件(44.6%)で最も多い。次いで、「契約事務の取扱いがない」366件(24.7%)、「具体的にどのような内容を入れればよいのか解らない」336件(22.7%)、「取引の対象が多く、暴力団等かどうかを見極めるためには多大な時間を費やす」301件(20.3%)などとなっている。他、「その他」とした回答では、「入札条件に盛り込まれている」や「必要性を感じない」などをあげている。

21 暴力団等の排除措置について

 暴力団等の排除措置については、全回答のうち、過去に暴力団等の排除措置をとったことが「ない」とするものが9割以上(2,696件・91.1%)を占めた。「ある」としたものは44件で1.5%となっている。

22 最近1年間における暴力団排除の有無

 前記21で過去に暴力団等の排除措置をとったことがあるとする44件のうち、「最近1年間に暴力団等の排除措置をとったことがあった」とするものは37件で84.1%となっている。

23 暴力団関係企業の排除の根拠

 前記22で最近1年間に暴力団等の排除措置をとったことがあるとする37件について、暴力団関係企業の排除の根拠をみると、「要綱、契約規定等に定めた暴力団排除条項」が大多数(35件・94.6%)を占めている。

24 排除の具体的措置について(複数回答)

 前記22で最近1年間に暴力団等の排除措置をとったことが「ある」とする37件について、排除の具体的措置をみると、「指名排除措置」が8割以上(30件・81.1%)を占めており、次いで、「指名停止措置」4件(10.8%)となっている。

25 暴力追放運動推進センターの活動(複数回答)

 暴力追放運動推進センターの活動で力を入れて欲しいものとしては、「暴力団等反社会的勢力の実態や不当要求等の予防に関する知識の普及」が最も多く全回答の8割を超え(2,467件・83.4%)、次いで、「上記1(知識の普及)に関する講習会の開催」が1,731件(58.5%)となっている。反社会的勢力対策に関する知識の普及活動に対する要望が強いことがうかがわれる。以下、「暴力団員による不当な行為に関する相談」1,634件(55.2%)、「市町村や業界等で行う暴力団排除活動や事務所撤去活動への協力・支援活動」944件(31.9%)などとなっている。

26 不当要求等対策についての警察への要望(複数回答)

 警察に対して望むこととしては、全回答のうち、「暴力団等反社会的勢力による犯罪の徹底的な取締り」が最も多く8割を超え(2,407件・81.4%)、次いで、「脅迫等を受けた際の保護」1,958件(66.2%)となっており、警察の執行力に対する要望が強いことがうかがわれる。以下、「暴力団関係企業等に関する情報提供」1,830件(61.9%)、「暴力団等反社会勢力に関する情報の提供」1,714件(57.9%)、「暴力団等反社会的勢力への対応要領の教示」1,424件(48.1%)などとなっている。

27 不当要求等対策についての弁護士、弁護士会への要望(複数回答)

 弁護士、弁護士会に対して望むこととしては、「不当要求の事例や、自治体や警察等による不当要求解決実例の情報提供」が最も多く7割を超えている(2,150件・72.7%)。次いで、「行政機関を対象とした不当要求対策マニュアルの配布」1,721件(58.2%)、「職員に対し、日頃から法的な助言を行う、若しくは相談を受理する体制を整えること」1,457件(49.3%)、「行政対象暴力事案に関する講演会の開催や研修会への講師の派遣」1,148件(38.8%)、「三者協定(注)のもとで、具体的な行政対象暴力事案について、救済に向けた取組みを行う」661件(22.3%)となっている。

 

(注)三者協定とは、警察、弁護士、暴追センターが協定を締結して情報交換や研修、具体的事案に対する連携を図り、各種事案に取り組む体制をいう。