暴力団情勢と対策

企業アンケートから

はじめに

 本資料は、今後の企業対象暴力対策のあり方を検討するために、平成17年1月に全国の企業を対象に、暴力団等の反社会的勢力による企業に対する理不尽な要求、そうした要求に対する企業の対応、企業からの警察等に対する要望等をアンケート調査した結果を概要としてとりまとめたものです。(2年毎に実施)
 ご多用の中、調査に快く協力いただきました各企業の関係者の方々に厚くお礼申し上げます。

調査の概要

 1 調査の方法、対象等
 本アンケート調査の方法、対象等は次のとおり。

    1. 調査方法 ・・・ 郵送法
    2. 調査対象 ・・・ 全国の企業3,000社

 
 2 回収結果
 調査票の回収数は1,724通(回収率57.46%)であった。回答企業の従業員数別の内訳は次のとおり。

    1. 1万人以上 ・・・ 48社
    2. 5,000人以上1万人未満 ・・・ 60社
    3. 1,000人以上5,000人未満 ・・・ 399社
    4. 500人以上1,000人未満 ・・・ 302社
    5. 100人以上500人未満 ・・・ 629社
    6. 100人未満 ・・・ 256社
    7. 無回答 ・・・ 30社

1 要求等の有無について

 暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ等の反社会的勢力からこれまでに金品の要求、契約の締結の強要等(以下「要求等」という)を受けた経験の有無について、「ある」とする企業が690社(40.0%)にのぼっている。

2 最近1年間における要求等の有無について

 要求等を受けた経験のある企業690社のうち、418社(60.6%)が、「最近1年間に要求等を受けたことがある」としている。

3 要求等を行ってきた者について(複数選択)

 過去に要求等を受けた企業690社について、要求等を行ってきた者をみると、半数以上が「えせ同和行為者」(422社・61.2%)及び「えせ右翼」(372社・53.9%)をあげており、この二つが群を抜いている。以下「暴力団」(120社・17.4%)、「暴力団関係企業」(85社・12.3%)「総会屋」(60社・8.7%)、となっている。

4 要求等の内容について(複数回答)

 暴力団及び暴力団関係企業からの要求の特徴としては、金品の要求の名目が多種多様にわたっていることがあげられる。
  暴力団からの要求では「製品の欠陥等へのクレーム及び示談金名下の金品の要求」が最も多く、暴力団からの要求を受けたことがある企業120社のうち37社(30.8%)があげており、以下「物品購入の要求」(22社・18.3%)、「寄付金・賛助金名下の金品の要求」(19社・15.8%)、「機関紙(誌)購入の要求」(16社・13.3%)、「下請契約締結の要求」及び「機関紙(誌)の一方的な送付」(ともに14社・11.7%)が続く。
 暴力団関係企業から要求等を受けた85社についてその内容を見ると、「下請契約締結の要求」をあげた企業が20社(23.5%)で最も多く、次いで「物品購入の要求」(15社・17.6%)、「機関紙(誌)の購入の要求」及び「機関紙(誌)の一方的な送付」(ともに14社・16.5%)、「寄付金・賛助金名下での金品の要求」(13社・15.3%)となっている。
 えせ同和行為者、えせ右翼及び総会屋からの要求等の内容としては、「機関紙(誌)購入の要求」が最も多い。えせ同和行為者からの要求等を受けた422社についてみると、「機関紙(誌)購入の要求」(197社・46.7%)が最も多く、次いで多いのは「物品購入の要求」(137社・32.5%)で、以下、「寄付金・賛助金名下での金品の要求」(79社・18.7%)、「機関紙(誌)の一方的な送付」(72社・17.1%)、と続く。
 えせ右翼から要求を受けた372社についてみると、「機関紙(誌)購入の要求」(144社・38.7%)に次いで多いのは「寄付金・賛助金名下の金品の要求」(98社・26.3%)で、以下、「物品購入の要求」(84社・22.6%)、「機関紙(誌)の一方的な送付」(51社・13.7%)と続く。
 総会屋から要求を受けた60社についてみると、「機関紙(誌)購入の要求」(19社・31.7%)に次ぐのは「寄付金・賛助金名下での金品の要求」(15社・25.0%)で、以下「株主総会の運営を紛糾させない見返りとしての金品の要求」(13社・21.7%)、「機関紙(誌)への広告掲載の要求」(9社・15.0.%)、「機関紙(誌)の一方的な送付」(8社・13.3%)となっている。

5 暴力団員と認識した理由について(複数回答)

 暴力団からの要求等を受けた120社について、要求等を行ってきた相手が暴力団員であると認識した理由をみると、「特有の言動・態度」(45社・37.5%)をあげたものが最も多く、次いで、「本人が名乗ったこと」(44社・36.7%)、「警察との情報交換」(41社・34.2%)となっている。

6 要求等の金額について

 過去に要求等を受けたことがある690社について、要求等の金額をみると、「10万円未満」とするものが半数を超えた(50.4%)。1,000万円以上とするものは合わせて14社(2.0%)あり、そのうち「1億円以上」とするものが4社(0.6%)あった。

7 対処の仕方について

 過去に要求等を受けたことがある企業690社について、要求等に対する対処の仕方をみると、「要求等を拒否した」とする企業が576社(83.5%)と8割を超え、圧倒的に多かった。しかし、一方で「要求等に全面的に応じた」とする企業が5社(0.7%)あり、これに「要求等の一部に応じた」(15社・2.2%)、「当初、拒否したが最終的には要求等の全面的に応じた」(4社・0.6%)、「当初、拒否したが最終的には要求等の一部に応じた」(25社・3.6%)とする企業を合わせると、結局要求に応じたとする企業は49社(7.1%)となる。

8 要求等に応じた理由について(複数回答)

 要求等に応じたとする企業49社について、要求等に応じた理由をみると、「対応に不慣れであった」をあげたものが14社(28.6%)で最も多かった。次いで「トラブルが拡大することを恐れた」及び「当方にも一部非があったため」がともに11社(22.4%)、「要求金額が少額であったから」が8社(16.3%)で続く。また、「襲撃を受ける危険性があると思った」が3社(6.1%)、「払っておけば逆に役に立つこともあろうと思った」とする企業が1社(2.0%)あった。

9 要求等に従わなかったときの相手方の行動について(複数回答)

 前記「対処の仕方」において、要求等を少なくとも一度は拒否した企業610社(「当初拒否したが最終的に全面的に応じた」、「当初拒否したが最終的に一部に応じた」、「交渉中」、「拒否した」を合わせたもの)について、要求等に従わなかった時の相手方の行動についてみると、「引き下がった」をあげたものが449社(73.6%)と圧倒的に多かった。一方で「物的損害や人的危害を加えてきた」をあげた企業が4社(0.7%)あった。

10 相手に渡した金額について

 前記「対処の仕方」で要求等に応じたとする企業49社について、相手に渡した金額をみると、「10万円未満」とする企業が最も多く32社(65.3%)を占めた。次いで「10万円以上100万円未満」(10社・20.4%)となっており、100万円未満とするものが85.7%と大部分を占めたが、1億円以上とするものも1社あった。

11 最近1年間のえせ右翼による糾弾活動の有無について

 最近1年間にえせ右翼からの糾弾活動を受けたことが「ある」とする企業が全回答企業のうち64社(3.7%)あった。この64社のうち、29社は上場企業であった。

12 糾弾活動の内容について(複数回答)

 前記えせ右翼からの糾弾活動を受けた64社についてその内容をみると、「本社(本店)への街宣」をあげた企業が32社(50.0%)と最も多く、「支社(支店・営業所)への街宣」(14社・21.9%)、「公開質問状等文書の送付」(11社・17.2%)が続く。また、「インターネットのホームページ等への中傷記事の記載」をあげた企業が5社(7.8%)あった。

13 糾弾活動を受けた際の対応について(複数回答)

 えせ右翼からの糾弾活動を受けた64社について、対応の状況をみると、「警察に届けた」をあげた企業が51社(79.7%)と最も多かった。次いで「弁護士に相談した」(27社・42.2%)、「暴力追放運動推進センターに相談した」(10社・15.6%)と続いている。

14 最近2年間の反社会的勢力対策の取組みの有無について

 最近2年間に反社会的勢力対策について新たな取組みが「ある」とする企業は全回答企業のうち608社(35.3%)、「ない」とするものは1,063社(61.7%)であった。

15 反社会的勢力対策の取組みの内容について(複数回答)

 最近2年間における反社会的勢力対策の新たな取組みがあるとする企業608社について取組みの内容をみると、「社員に徹底するための企業倫理マニュアルなどの作成」をあげた企業が44.2%と最も多く、次いで「警察や暴力追放運動推進センターとの連絡体制の強化」(40.0%)、「企業倫理綱領など社の基本方針の策定」(39.6%)「社員に対する倫理研修を取り入れた」(33.1%)が続く。

16 最近2年間に反社会的勢力対策の取組みを行っていない理由

 最近2年間に反社会的勢力対策の新しい取組みを行っていない企業1,063社について、その理由をみると、「以前からすでに取り組んでおり必要がなかった」とするものが50.5%と過半数を占めた。一方で、「取組みの必要性を感じなかった」とするものも29.4%あった。

17 暴力団等反社会的勢力の海外活動について(複数回答)

 日本の暴力団等反社会的勢力の海外での活動については、海外の拠点があるとする企業598社のうち「全く聞いたことがない」とするものが554社(92.6%)と大部分であった。一方で、自社または他社の件で「被害事例やうわさを聞いたことがある」とするものが合わせて27社、「実際に被害にあった自社の例がある」とするものも2社あり、暴力団等反社会的勢力の被害が海外に及んでいることがうかがわれる。
 

1.実際に被害に遭った(もしくは、本社に報告があった)自社の事例がある。 2( 0.3%)
2.自社の件で(具体的な報告はないが)うわさで聞いた話がある。 2( 0.3%)
3.他社の件で、被害事例やうわさを聞いたことがある。 25( 4.2%)
4.その他 5( 0.8%)
5.そのようなことは自社の件でも、他社の件でも聞いたことがない。 554(92.6%)
無回答 3,000万円
  (N=598)

18 暴力団等反社会的勢力の海外活動(国・地域別)について(複数回答)

 海外で実際に被害にあったとする国・地域ではフィリピン及びマレーシアをあげた企業が各1社であった。自社の件でうわさを聞いた国・地域では、中華人民共和国及びフィリピンをあげた企業が各1社あった。他社の件でうわさを聞いた国・地域ではフィリピンをあげたものが6社と最も多く、次いでインドネシア及びアメリカ合衆国をあげたものが各4社、中華人民共和国及び香港が各3社と続き、アジア諸国をあげた企業が多くなっている。
 

  実際に被害に遭った自社の事例がある 自社の件でうわさで聞いた話がある 他社の件で事例やうわさを聞いたことがある
フィリピン共和国
インドネシア共和国
アメリカ合衆国
中華人民共和国
香港
台湾
タイ王国
ブラジル連邦共和国
コロンビア共和国
大韓民国
マレーシア
ロシア連邦
オーストラリア
フランス共和国
ドイツ連邦共和国
シンガポール共和国
イタリア共和国
ペルー共和国
イギリス
その他
無回答

19 海外拠点における暴力団等反社会的勢力への対応策の状況について

 海外拠点があるとする598社のうち、海外拠点における暴力団等反社会的勢力への対策の必要性を感じている企業は391社(65.4%)と6割を超えている。一方で必要だと感じていないとする企業が133社(22.2%)あった。
 しかし、必要だと感じている391社のうち「海外拠点に注意を呼びかける程度やっている」とする企業は107社(391社中27.4%)、「全社的な対策行っている」のは65社(同16.6%)に過ぎず、「必要を感じるが何もしていない」が過半数(198社・同50.6%)にのぼっている。

20 企業対象暴力対策についての警察への要望(複数回答)

 企業対象暴力対策についての警察への要望としては、「暴力団、総会屋等による犯罪の徹底的な取締り」が最も多く、全回答企業の84.9%があげている。次いで「暴力団等への対応ノウハウの提供」(72.6%)、「暴力団関係企業等に関する情報の提供」(68.6%)、「暴力団等の手口等や被害事例の提供」(67.4%)、「暴力団に関する情報の提供」(62.8%)となっている。また、「脅迫等を受けた際の幹部等の身辺警護」についても27.7%の企業があげている。

21 個人に対して行われた、私生活の関する要求等の有無

 役員や社員個人に対して行われた私生活に関する要求等に対して、「要求等があった場合報告するよう指導している」または「指導はしていないが報告があった」とする企業が1,269社のうち、最近1年間にそうした要求等があったとする企業は649社(51.1%)あった。

22 個人に対して行われた、私生活に関する要求等の内容(複数回答)

 最近1年間に役員や社員個人に対して行われた私生活に関する要求等の内容としては、見に覚えのない借金の返済やインターネットの有料サイト代金の請求等の「架空請求」をあげたものが502社(77.3%)と最も多く、次いで「個人的なスキャンダルに対する口止め料名下の金品等の要求」(303社・46.7%)、「債務履行要求」(99社・15.3%)となっている。